秘境駅探訪の指南と飯田線秘境駅号

「秘境駅」というものを御存じでしょうか?この言葉自体は鉄道ファン・秘境駅訪問家である牛山隆信氏が広めた言葉ですが、今回はこの「秘境駅」と秘境駅を訪れる「秘境駅」号について取り上げようと思います。

秘境駅と一般的な駅の違い

まずは秘境駅の定義と言われるものを簡単に紹介していこうと思います。

一般的に「駅」と言われるとどのようなものを想像されるでしょうか?上の写真はJR九州の博多駅の写真ですが、規模の違いはあるものの一般的な駅のおおよその定義として

・都市や町の中心に位置し、駅の中もしくは駅周辺に商店やショッピングモール、飲食店が存在する(市役所等の役場や病院、学校等の公共施設も駅付近にある場合も多い)。

・駅前もしくは駅の裏口にバス停があり、徒歩やバスで駅へ来ることが可能。

・駅前にタクシー乗り場があり、タクシーの利用も可能(あるいは電話で呼び出し可)。

・駅によっては複数の路線が乗り入れており、駅を介して相互間の乗り換えが可能。

・駅周辺に駐車場・駐輪場があり、自家用車や自転車で駅に来ることも可能。

・列車も1時間に1~2本程度以上はあり、通勤・通学や、お出かけの足として鉄道の利用が可能。

このように、駅は都市や町の中心として位置付けられ、住宅団地等の開発も駅を基準としてされることが多いです。皆さんの近くにある駅も上の定義に当てはまるような駅が多いのではないでしょうか?

ここまでは一般的な駅の定義ですが、この定義に当てはまらない駅もあります。つまり、

・都市や町の中心に位置しておらず山奥や海のすぐ近く等人気のない所にある。駅の中もしくは駅周辺に商店やショッピングモール、飲食店は少ない、もしくは皆無(当然ながら市役所等の役場や病院、学校等の公共施設も駅付近に無い)。

・駅前もしくは駅の裏口にバス乗り場はおろか道も無く、バスや自家用車・自転車やタクシーでの駅への到達は不可能な場合もある。到達できる手段は列車以外では徒歩のみ(駅から道までが非常に遠い)。ひどい場合は列車以外での到達は不可能。

・列車の本数も1日に数本程度と非常に少なく、列車での駅への到達も困難。

・駅を利用する人も非常に少なく、1日10人以下しか利用しない。

この赤線の条件のように、何故こんなところに駅が?と思うようなところに駅がある場合もあります。一般的にはこのような駅を「秘境駅」と呼びます。概ねローカル線にあることが多く、北海道や九州・四国、あるいは山間部を走る路線に比較的多いように思います。しかし、東京都等の都会でも、これらの条件全てには当てはまらなくても、いくつか当てはまる場合もあります。この場合、「都会の秘境駅」と呼ぶ場合もあります。例えば、豊洲市場建設地近くの東京臨海新交通(ゆりかもめ)の市場前駅はかつては駅周辺に何もないこと、東京都江東区にありながらも乗降客数が一日10人以下しかないこともあり、「都会の秘境駅」と呼ばれていた時期もありました。

この全国各地にある秘境駅を訪れ、駅の秘境度・雰囲気・列車到達難易度・外部到達難易度・鉄道遺産指数から総合評価を算出し、秘境駅のランキングを作成したのが、最初に紹介した牛山隆信氏です。以下のHPにそれぞれの「秘境駅」の情報が載っていますので参考にして下さい↓

http://hp1.cyberstation.ne.jp/hikyoueki/(牛山隆信氏HP・秘境駅へ行こう!)

ちなみに、同氏の最新のランキングによれば、TOP3は以下の駅となります。情報収集用のwikipediaのリンクもつけておきます。

第3位 小和田駅(JR飯田線) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%92%8C%E7%94%B0%E9%A7%85

第2位 尾盛駅(大井川鉄道井川線)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E7%9B%9B%E9%A7%85

第1位 小幌駅(JR室蘭本線)

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%B9%8C%E9%A7%85

いずれの駅も自動車での到着は不可能であり、周囲に人家や店舗も無く、まさしく秘境の中の駅です。

秘境駅に行く時に用意するもの・注意事項

これから秘境駅の訪問を考えている方に、持ち物・注意事項についてアドバイスをしようと思います。

まず、秘境駅の訪問は通常の駅の訪問と同じと思わないでください。先程も書いたように、秘境駅周辺には道が無い場合が多く、救急車は来れないということになります。秘境駅周辺に集落は無い場合も多いため、何かあった場合に助けを求めることも出来ません、携帯電話も圏外となる秘境駅も多いです(携帯電話は人のいるところに基地局=アンテナを設置するため、人のいない秘境駅周辺にはアンテナを立てていない場合もあります)。また、野生生物の被害を受ける可能性もあります。秘境駅探訪で遭遇する危険性があるのは、駅にもよりますが熊・野犬・マムシ・蜂等の生物が多いです。気を付けないと駅ではありますが遭難する危険性が高いです。何があってもあくまで自己責任・自己解決が前提となります。近くに商店や自動販売機も無いため、食料補給も難しいです。それでも行きたい方はここから書く持ち物・注意点を読み、参考にしていただけると有難いです。なお、秘境駅により持っていくものが若干違ってくる場合もあると思うので、あらかじめ行きたい秘境駅の情報を調べてから荷物の準備をすると良いでしょう。

秘境駅訪問に持っていくと良い持ち物

・長袖の服・帽子・歩きやすい靴

・懐中電灯(予備の電池も)・携帯用のラジオ

・ある程度の食料

・多めの飲料水

・ウェットティッシュ・タオル

・熊除けの鈴・虫よけスプレー等野生生物への対策グッズ

・雨合羽

量の差こそあれど、山登りに必要とされるものに近いです。秘境駅で寝る場合にはこれに寝袋も加わります。短時間での訪問ならそこまでの量は必要でないかもしれませんが、食料や飲料の調達は秘境駅では基本的に出来ないこと、列車の運転見合わせ等万が一の場合を考えて食料・飲料は多めに持参した方が良いかと思います。秘境駅周辺の野生生物のことも考え、長袖の服での訪問が良いかもしれません。駅周辺は舗装もされていない山道が多いため、歩きやすい靴での訪問が良いです。また、秘境駅で泊まるのはある程度秘境駅の訪問に慣れてからの方が良いでしょう(夜間の秘境駅は色々な意味で非常に危険です)。

次に注意事項について書いていこうと思います。非常に大事なことなのでよく読んでください。

秘境駅訪問の注意事項

1・前もって列車の時刻や訪問する駅の情報を入手しておく。

秘境駅に停まる列車は少なく、何の計画も無い旅だと秘境駅で数時間待たされる場合もあるため、訪問に出発する前にその駅に停車する列車の時刻や、訪問終了後に乗車する列車の時刻を調べておきましょう。訪問終了後の列車については、自分の乗る列車だけでなく、他にも1~2本調べておくと良いと思います。

また、駅の情報についてはwikipedia等で調べればわかります(秘境駅ランキング上位の駅は秘境駅としての知名度が高いため)。秘境駅の訪問においては、訪問と同じくらい事前の準備をしっかりしておくことが大事です。

2・天気の悪いときには秘境駅訪問には行かない。

先程も書きましたが、秘境駅訪問は駅で遭難する危険性もあり、助けを呼ぼうと思っても呼べる場所ではありません。遭難時にはヘリコプターでの救出となる場合もあります(ひどいとそれすらできない場合もあります)。このため、列車の運転見合わせの可能性のある場合(夏場では台風襲来時や、雷がなっており夕立の可能性がある等大気の状態が不安定な時、冬場は大雪となる可能性がある時等)には秘境駅訪問に行かないのも大事な決定です。列車が運転見合わせになったかどうか・運転再開の見込み等を秘境駅では把握できず、駅からの脱出も出来ない可能性もあり、運転再開まで待たされる可能性もあるからです。また、駅によっては土砂崩れ等に巻き込まれる危険性もあり、冬場には凍死のリスクもあります。このようなリスクを避ける意味でも、秘境駅訪問は天気の良い日に行うようにしましょう。出来れば日の暮れるまでが長い午前中の訪問をお勧めします。

3・体調不良時には秘境駅訪問に行かない、立ち入り禁止の場所には絶対に入らない

2・にも通じる部分がありますが、秘境駅訪問は自己責任・自己解決が原則となるため、体調の悪い時に無理をして行く場所ではありません。体調を崩しても助けてくれる人がいる場所ではなく、薬や水等の入手も極めて難しい場所です。体調不良時の秘境駅訪問は生命のリスクにも直結します。このため、万全の体調の時に行くようにしましょう。

また、秘境駅周辺は山道となっている場合が多いですが、立ち入り禁止の表示やロープがある場合はそこから先へは絶対に入らないでください。マムシや熊等の野生生物との遭遇、山道からの滑落の危険性等があります。下調べしてあれば良いですが、秘境駅から集落までの道は遠く、細い山道の場合もあるため出来れば秘境駅周辺に留まり見学を楽しむことをお勧めします。

以上の持ち物や注意点を参考にし、秘境駅訪問を楽しんでいただければ幸いです。

飯田線秘境駅号

これまでにも紹介したように、秘境駅の訪問には持ち物・計画とも周到な準備が必要となりますが、お手軽に秘境駅の訪問を楽しむことが出来る列車がありますので紹介していきます。今回紹介する以外にも運行している秘境駅探訪用の列車はありますが、今回は秘境駅ランキング第3位の小和田駅があるJR飯田線を運行する「飯田線秘境駅号」を紹介します。

愛知・静岡・長野の県境の山間部を運行するJR飯田線(豊橋~辰野)では、線内に秘境駅が多数あることから、上の画像の様な「飯田線秘境駅号」を豊橋~飯田間で運転しています。毎日の運行ではなく、あくまで臨時列車としての扱いです。運行日等は以下のJR東海のリンクを御参照下さい。飯田線は2017年で全線開通80周年を迎える為、様々なイベントが行われています。↓

http://jr-central.co.jp/news/release/_pdf/000034523.pdf

この、「飯田線秘境駅号」は飯田線内の秘境駅である、小和田(こわだ)駅、田本(たもと)駅、金野(きんの)駅、中井侍(なかいさむらい)駅、 為栗(してぐり)駅、千代(ちよ)駅、伊那小沢(いなこざわ)駅に停車し駅周辺の見学も可能な列車です。また、秘境駅ではありませんが新城駅、平岡駅等の主要駅にも停車しますので、お土産等の購入も可能です。

牛山隆信氏のHP内(http://hp1.cyberstation.ne.jp/hikyoueki/)での、これらの駅の全国秘境駅度ランキングは以下の通りです。

小和田駅・・・3位

田本駅・・・4位

金野駅・・・7位

中井侍駅・・・14位

為栗駅・・・17位

千代駅・・・26位

伊那小沢駅・・・85位

※秘境駅ランキングは、平成 29 年 3 月 2日現在のものです。

通常この7つの秘境駅を一日で回りきるのは、列車の時間の関係上からもかなり難しいですが、この列車を使えば、約6時間弱でこの7駅を全て訪問することが可能となります。

始発の豊橋駅の発車時間が9時50分であり、東海道新幹線も停車するため最遠は広島からでもその日のうちにこの列車に乗車することが可能です。全車指定席の急行列車となるため、急行券・指定席券はJRの駅のみどりの窓口等で購入して下さい。同区間(豊橋~飯田)を走行する特急「伊那路」よりもお得に乗車できます。

土日祝日に発売されるJR東海の乗り放題乗車券の青空フリーパス(http://railway.jr-central.co.jp/tickets/aozora-free-holiday/)と併用するとよりお得にご利用できます。

また、JR東海ツアーズの旅行商品でも「飯田線秘境駅号」を利用した旅行商品がありますので、そちらのご利用も良いかと思います。詳しくは以下のリンクを御参照下さい↓

http://www.jrtours.co.jp/shinshu_plan/hikyoeki/?scid=pick-hikyoeki3(JR東海ツアーズHP・飯田線秘境7駅探訪の旅)

さいごに

秘境駅の訪問には通常の駅と違い、持ち物・気象条件等注意すべき点がいくつもあります。秘境駅の周辺には商店や観光地等何もなく、「なんでこんなところ行くの?」と思われる方もいるかもしれませんが、誰もいない静寂・自然そのものを楽しめるという秘境駅ならではの非日常の体験が出来ると思います。また、秘境駅にはノートが設置されていることが多く、訪問したことを残しておくのも良いかと思います。

安全に配慮すれば手軽に楽しめる非日常である秘境駅。訪問の際には今回の記事が役立てば幸いです。

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